解析事例サイト

日本原子力研究開発機構

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このサイトについて

このサイトは、原子力機構 福島環境安全センターとシステム計算科学センターで実施してきた環境動態研究における、解析的研究の成果を利用頂けるサイトです。
これまで原子力機構では、東京電力福島第一原子力発電所事故による放射性セシウムの濃度分布や空間線量率分布等を調査してきました。平成29年4月までに帰還困難区域を除いたほとんどの自治体で避難指示が解除されており、今後は解除後にも役立つ情報の提供が求められます。
そのため、これまで蓄積されてきたデータを基に、環境中の放射性セシウムの移行挙動について、現在まで様々なケーススタディを行った解析結果をまとめた解析事例サイトを整備しました。 解析事例サイトでは、以下のような成果を集めています。
 ① 放射性セシウムは環境中でどういうメカニズムでどのように動いているのか
 ② 空間線量率や放射性セシウムの濃度は環境条件の違いによりどのように変化するのか
 ③ 空間線量率や放射性セシウムの濃度は将来どうなっていくのか
本サイトの結果は、解析で用いたモデルの制約から、実測や観測による結果とは異なる不確実性を有するため、根拠情報Q&Aと独立させています。 環境動態研究における解析的研究の概要についてはこちらをご覧ください。
また、現在環境動態研究で開発しているモデルの制約についてはこちらをご覧ください。

放射性物質と空間線量率

全般

請戸川流域内のフォールアウト5年後の放射性セシウムのストック・フローを計算しました。また、その結果は大柿ダム湖での流出率や海への流出量等の実測値とおおよそ整合することを確認しました。

空間線量率

航空サーベイ、車両サーベイ、歩行サーベイを統合した統合マップを用い、減衰の速い成分と遅い成分を考慮した二成分モデルに基づく予測を行っています。

緩衝深さによって影響距離は異なりますが、地上1 m高さの空間線量率に与える放射線のおよそ90 %が半径100 m以内に分布する放射性セシウムに起因しています。

土壌中の放射性セシウム濃度が同じ場合、山地形では平坦地よりも空間線量率が低く、谷地形では高くなります。また、その傾向は地上から高い位置ほど顕著であることがわかりました。
市街地においては、建物や樹木による遮蔽効果によって、それらがない場所に比べて空間線量率が低くなります。また、それ以外に、建物直下は汚染されていないことによる影響により、空間線量率が低くなります。

田畑の除染方法である表土剥ぎ取り、反転耕、天地返しに対して空間線量率の低減効果を解析し、除染モデル事業における実験結果と比較し、除染効果の検証を行いました。さらに、放射性セシウムの深度分布、除染対策を行う深度、除染効果の関係等について明らかにし、放射性セシウムの深度方向への移行とともに除染効果が低下する可能性を示しました。

除染活動支援システム“RESET”を使って帰還困難区域の除染の効果を予測しました。また、その結果に基づいて除染後の空間線量率の将来予測を行ないました。

  • 除染の効果は、除染を行う地域の地形や土地の利用形態等の違いによって異なりますが、空間線量率は平均で60%程度低減すると予測されます。
  • 特定再生復興拠点の避難指示の解除を目指す2022年春~2023年春頃には、避難指示の基準となる年間の追加被ばく線量20 mSv(3.8µSv/h)を超える面積は0%になると予測されます。
  • 除染により空間線量率の低減は20~30年早まると予測されます。

樹冠から林床に放射性セシウムが移動した場合、地上1 m高さの空間線量率は、放射線源が近くなるため上昇しました。また、リター層から土壌層へ放射性セシウムが移動した場合、リター層および土壌層による遮蔽の影響で空間線量率は低下しました。

放射性物質の動き(森林)

森林内外の移動

放射性セシウムの深度分布は、フォールアウト初期において指数分布型を示し、その後緩やかに深部へ移行しつつ指数分布型を保つか、深いところまでテーリングする傾向を示します。このような傾向は既存のモデルでは表現できませんでしたが、収脱着のカイネティクスを導入したモデルによって実測値とよく整合する結果を得ることができました。

森林内の移動

森林の部位別の放射性セシウム濃度の経時変化について実測値と良好にフィッティングできました。また、その条件下でフォールアウト時の遮断率および樹冠から落葉層への移行傾向は実測値と整合的でした。

放射性物質の動き(河川水系)

河川での移動

福島県東部の阿武隈川流域及び浜通り主要河川水系では、放射性セシウムのうち137Csは70%が森林に、次いで田を含む農地に多く沈着し、1年間でおよそ8.4TBqが流出したと推定されます(初期値は2011年6~7月の文部科学省による放射性物質等の分布調査結果に基づく)。放射性セシウムの海への流出は、畑地からの寄与が約5割を占めており、次いで森林、水田の順と推定されました。

上流からの土砂をせき止める効果のあるダムの存在は、懸濁態セシウムの下流への流出を抑制します。さらに、森林は地表で水流が発生しにくいため、土砂の流出量が少なくなることがわかっています。

様々な降雨パターンに対する、頭首工での応答(水の濁り具合:濁度や放射性セシウム濃度)を解析で推定しました。浮遊物質濃度(濁度)が高いときに河川水中のセシウム濃度も高い傾向があります。河川水中のセシウム濃度は大雨後数時間~数日、高いこともあります。

河川近傍や森林の沢沿いでの侵食量が大きく、河川から離れた森林では侵食がほとんど生じていないことがわかりました。定量的には、河川近傍からの寄与は、河川から離れた森林からの寄与に比べて1桁ほど大きいことがわかりました。

河川の下流に位置する河川敷に放射性セシウムの付着した堆積土砂が多く堆積しているとともに、その堆積分布には偏りがあることが実際の観測から確認されています。この現象のメカニズムを理解するためにシミュレーションを実施した結果、河川が歪曲している部分に放射性セシウムが堆積しやすい傾向が再現できました。

川への放射性セシウムが異なる複数の解析ケースの解析結果から、落葉の河川への直接流入と、落葉層から河川への側方流入が主に寄与していることが示唆されました。

ダムでの挙動

降雨時に土砂とともにダム湖に流入する放射性セシウムは、多くが湖底に蓄積されます。蓄積する割合は、降雨の強さや継続時間が大きいほど小さく、また流入する土砂の粒径分布等に依存します。

河川敷・河口域での移動

シミュレーションにより、河口域に流入した河川水は海面を広がっていることが確認できます。これは河川水の塩分濃度が低く、また水温が高いために海水よりも密度が小さいためと考えられます。一方で、海底での流れでは海面とは逆に河口へ向かう流れができており、一度沿岸から離れた河川由来の土砂等が沿岸方向に戻されることが確認されました。